創立者 水谷令代が、30年あまりの公立小学校の教員生活のなかで幼児教育の大切さを肌で感じ、私財のすべてを投じ、設立を決意。昭和57年に認可され、同年4月1日に開園、現在に至っています。
「心を育てなければならない」という議論は多くありますが、具体的にどのようにして育てたらよいかという議論は少ない。
端的にいえばそれは、早寝早起きに始まる基本的な生活の習慣にはじまります。十分な睡眠が人に元気をおこさせる。機嫌のよいふるまいはゆとりをうみ、それが、おもいやりに始まる心の成長につながる。これをもって「心を育てる」と認識するのが、最近とみに心して進める理念です。
次に、しつけです。人はしつけということばを、「子どもをしつける」とか「ペットをしつける」とか、とかく、他者に対して遣いますが、著名な人の言葉を見ると「しつけ」とは「自らをしつける」意味に遣われています。なるほど、そうすると、「しつけ」とは、実に意味深い物であると再認識します。
また、幼稚園とは、あるいは教育施設とは、何かを教えるところと理解されがちですが、実を言えば、それは、教育をともに考える「場」であることに考えが及びます。教師は幼児に教えられ、幼児は大自然に教えられ、育てられる。お互いの存在の、ぶつかりあいが、教育という場を作っています。
従って、子どもたちが育った分だけ、大人たちも育っています。
見て、聞いて、触ってみることによって右脳が発達するので、どんどん園の外に出て直接経験するようにしています。
本来、人間の生活とは、目の前に物があることが大前提。便宜上印刷物などを用いてはみるがそれは、仮の世界です。
幼児として最も大切にしたいことは、本物に出会うこと。本物といっても、なにも一流の演奏家が行なう一流の演奏ばかりではありません。幼児がおしゃもじでナベをたたくのも立派な、本物。そのことを理解したうえで、あえて多くの「本物」と出会う機会を作りたいと願いながら、保育を進めています。
また、桑名市内には5つの私立幼稚園があります。
私学としての任務の重さを痛感しながら、力を合わせて日々、研鑽にはげんでいます。
1999年度のくわな幼稚園保育テーマは「パワーの向こうに優しさが見える」です。
本当の優しさは、ある意味の厳しさに裏打ちされています。
幼児を、「好きなことを好きなときに好きなだけしなさい」と突き放すことは、実はとても残酷なことであることを、知るべきです。原始の時代ならまだしも、ここまで科学が発展し、大きくて深い文化が存在するかぎり、大人が子どもに伝えていかねばならないことは、ガンとしてあります。突き放して「学びたいときに学びたいことを学びたいだけ学びなさい」と伝えることで、いかに幼児に迷いを与えているか、大人は認識すべきです。
「そんなこと、少しも教えてくれなかったのに、今になって文句を言うのはなぜ?」と若者は思っています。
「突然厳しい表情で、世間はね…と大人が講釈をたれるのはなぜ?」「どうして、小さいころから人の話を素直に聞くくせを付けてくれなかったの?」と若者は思っています。
中途半端な「自由」が子どもたちを「迷いっぱなし」の人生に旅立たせてしまっているのではないでしょうか。 今できること…朝起きたらおはようございますと言い、眠る前にはおやすみなさいと家族に言うことが、とっても大切なことであることを、叱って教える必要はないまでも、きちんと伝えるべきです。
自らをしつけたことのある大人ならば、そんなに難しいことではないはずです。 そして、自分の好きなことをするためには、我慢が必要であることも、やがて、学んでいきます。意欲を伴った我慢とでも、いいましょうか…それが、その幼児の、人間の興味と関心をささえ、ひいては人間性を培います。 この思いを失わないことが、将来への展望であり、幼い人間たちへの愛情です。